花駒は燦ホールディングス
(東証上場:9628)の
グループ会社です
北村 孝子
品質管理課スタッフ
入社してもうすぐ5年になります。葬儀の仕事に就くのは初めてでしたが、一緒に働く仲間にも恵まれ、お葬儀について事前に話を聞きたいとお越しになるお客様のご相談対応や、セレモニー当日に進行をサポートする仕事を行っています。
花駒の事前相談は、葬儀の準備そのものというよりも、その前に不安や疑問を整理するための時間です。まだ何も決まっていない、葬儀について流れや費用などよくわからない、そんな状態のお客様が最初に足を運び、言葉を交わす入口となる機会です。
そこでどんなお話をするかによって、その後の葬儀の受け止め方が変わることもあります。葬祭ディレクターのように式のプランをご遺族と一緒に作り、当日に取り仕切るわけではありませんが、お客様の中には「事前対応がよかったから」と、そのまま依頼を決めてくださる方もいらっしゃいます。特別な営業トークをするのではなく、私はただお客様のお話を伺うのが好きなだけなんです。

事前相談に来られるお客様の多くが、葬儀についてよくわからないと不安を抱えておられますが、その姿は私自身が入社した当時に重なります。私も入社当時は葬儀のことはちんぷんかんぷんで、物の名前や用語は覚えられても、ご葬儀前後の流れや必要な対応もそれぞれなので「早く覚えなければ」という焦りが大きく、しんどかったです。
でも、わからないことがあれば、社内に問い合わせるなど必死に調べてお客様にご説明して、また次に活かす。そうやって経験して覚えていくことで、少しずつ身についていきました。
ホールの開館を任され、初めて一人で事前相談の対応をしたときのことは、今でも覚えています。お尋ねされたことがわからない時は、その場で上長に電話して確認し、内心ドキドキしながら対応しました。
そのお客様は、私にとって初めての会員登録をしてくださり、後日お葬式の依頼をしてくださいました。「北村さんが、本当に一生懸命に対応してくれたからやで」と。私はあたふたしていただけなのに、驚きました。自信は、思いがけないところからやってくるものだと知りました。
事前相談に来られるお客様の多くは、大切な方が入院中だったり、余命を宣告されていたりする状況です。葬儀のことを考えなければならない現実と、まだ向き合いきれていない気持ちの両方を抱えて来られます。だから、こちらからあれこれ説明するよりも、まず何が気になっているのか、何を不安に思っているのかに耳を傾けることを大切にしています。
いかにお客様に安心してお考えを話してもらえる空気を作るか、が基本です。目の前の方が何を求めているかを会話の内容だけではなく、表情や口調からもくみ取ろうと心がけています。うまくできているかはわかりませんが、それがやりがいになっています。
相談の時間は、スムーズに終われば1時間ほど。雑談が弾むと、なかには2時間たっぷりお話して帰られる方もいます。でも全然苦じゃなくて、むしろ「もう帰られるのか」と思ってしまうくらいお客様とお話するのが好きなんです。

事前相談に来られる方の中には「お葬式は、こうしないといけない」と思い込んでいる方も少なくありません。お寺様に来てもらわないといけない、会社の人を呼ばないといけない、ちゃんとした形でやらないといけない。考え事が多くなり、悲しみ以外の気持ちにも押しつぶされそうになる方もおられます。
ある日、入院されているご主人のことで、奥様と娘様がご相談にいらっしゃいました。おふたりの表情はとても暗く、重苦しい雰囲気でした。話を聞きながら「今はお寺さんなしでも、できますよ」と案内してみると「そんなことができるんですか」と驚かれました。
お葬式の決まり事だと思い込んでいたかたちが、やわらかくほどけていく瞬間でした。
家族だけで葬儀をして、後から会社関係にお知らせする方法もあること。湯灌という選択肢もあることなどもお伝えし、キッチンやお風呂などの設備も見ていただきながら、花駒のコンセプトをお伝えしました。
「最期の家族旅行に来たかのように過ごしてもらえるよう、ホテルのような空間づくりをしているんです」と。
その言葉を聞いた瞬間、奥様と娘様が泣き崩れました。ご主人は旅行が好きだったのに、入院してからどこにも行けなかったのだと、涙ながらに教えてくださいました。
後日、葬儀のご依頼がありました。お式の当日にサポートスタッフとして付いた私に、奥様が声をかけてくださいました。先日の事前相談の帰り道に、娘様と「お葬式の準備じゃなくて、家族旅行に出かけるための準備をしようね」と話したのだと。
故人様のお顔を見たら、かっこよくハットをかぶってスーツを着て、旅行に行くような素敵ないでたちでした。ご遺族がお別れの時間をどうしたいかをご自身で考えて、たどり着いた形です。その最初の入口に立ち会えるのが、事前相談の仕事だと感じています。
去年の1月に、父をがんで亡くしました。80歳近くになっても元気だったのに、だんだんと弱っていく様子を看ていったので、同じような状況のご家族が来館されると、どうしても重なってしまいます。
ある日、余命宣告を受けたご本人が奥様と娘様と一緒に来られました。ご本人はとても明るく振る舞われていましたが、これから食べられなくなっていき、起き上がるのもつらくなっていくだろう。そう想像すると胸が締めつけられました。それでも、こみ上げるものを胸にとどめて、やわらかな笑顔でお話を聞いていました。
自分の父親の話もさせてもらいました。「うちの父も同じがんでした。明るくてお酒が好きで、似ていますね」と。ご家族が感じているしんどさも、自分の経験から少しはわかる気がして。
私はお式で泣くこともあります。もちろん陰でこっそりですが。1件1件に想いを込めることは、お客様と向き合っていれば自然とそうなっていくものだと感じています。

花駒では、お客様からの信頼を大切にし、その積み重ねを日々振り返る仕組みがあります。スタッフ一人ひとりの関わり方が、そのまま評価として返ってくる環境です。
もちろん、評価のために動いているわけではありません。でも、自分のために動いているか、お客様のために動いているかは、きっと伝わるものだと思います。どんなに言葉や所作を整えても、気持ちが伴っていなければ見透かされてしまう。葬儀の場では、特にそれを感じます。
花駒では働くみんなが、同じ方向を向いています。お葬儀の準備から、故人様のために、ご遺族のために、どうすれば喜んでいただけるかをみんなで考えます。誰かひとりが頑張るのではなく、チーム全体でそういう空気がある。それが私の思う花駒らしさです。
毎日のようにお葬儀がありますが、流れ作業には絶対になりません。それぞれの故人様と、そのご家族がいます。その当たり前をずっと大切にしていきたいと思っています。
実際に利用されたお客様が「清潔で快適に過ごせた」と口コミで伝えてくださり、それを聞いた別の方が来館してくださるという流れもあります。目に見えないところでの積み重ねが、信頼をつくっていくのだと日々感じています。

私は、笑顔でいることを常に心がけています。悲しみの中にいる方に無理に笑顔を向けるわけではありませんが、普段の挨拶や声かけは笑顔で。表情ひとつで場の空気が変わることがあるので、自分にできることとして意識しています。
事前相談でお会いしたお客様とは、その後もご縁が続くことがあります。お式の当日に顔を見てほっとしてくださる方もいますし、イベントなどでお会いして近況を話してくださる方もいます。
また、同業他社にお勤めの方がご親族という状況で来館されたお客様が、それでも花駒を選んでくださったことがありました。葬儀が終わってからそのことを知って、本当に驚きました。プランの内容もそうですが、事前相談での私の対応が決め手だったと言っていただいて。そんな声が、仕事の励みの一つになっています。
「北村さんに会えた」「元気をもらえた」と言ってもらえる関係を、お客様一人ひとりと作っていきたいと思っています。経験を重ねても、特別なことは何もしていなくて、ただお客様の話を聞くのが楽しくて、それが積み重なってきただけです。
お客様が、ここまで私を育ててくれました。