花駒は燦ホールディングス
(東証上場:9628)の
グループ会社です
川東 礼治
フラワーデザイン課 リーダー
取材時期:2026年9月
※本文中の所属・役職・経験年数等は取材当時の内容です

花駒に入社したのは2024年5月ですが、葬儀のお花に関わる仕事は20歳から始めていて、もう30年以上になります。
当時はフリーターのようなことをしていて、もう一つアルバイトをしようかなと思ったのがきっかけです。ちょうどバブルが終わるぐらいの頃で、アルバイトで受けた花屋の社長が「それやったら、今正社員を募集してるからどう?」と声をかけてくれました。
花屋の仕事だったのは、正直たまたまなんです。その後も花祭壇を専門に作る会社などいくつかのところで働きましたが、葬儀のお花屋という業界はずっと一緒でした。
転職は何回かしていますが、1回だけ全然違う営業の仕事をやってみたことがあります。でも3か月ぐらいで、またこの仕事に戻ってきました。
営業をしていても「もう一回、花の仕事をやりたいな」という気持ちがどこかにあったんです。外回りをしていて花屋さんを見かけると、またやりたいなと気持ちが揺れて。営業の仕事が正直しんどかったので、逃げの気持ちもあったかもしれないですけど、花の仕事に戻ろうと決めました。今では働ける限りは、この仕事をやっていこうという感じです。
実は、上野社長のことは20歳の頃から知っていて、その後、久々に会った時に花駒の社長になったことも聞いていました。そこから、私は東京で働いていた時期もありましたが、こっちに帰ってきた時に、求人紹介会社にどこかいいところがないか聞いたんです。
そこで勧められたのが花駒でした。ホール数も昔は1つか2つしかなかったのが、家族葬のファミーユの仕事もして、当時よりかなり規模が大きくなっているということを知り、興味がわいて応募しました。
最終面接の時に、社長が私のことを覚えていてくれて、「なんで直接電話してくれへんねん」と言ってくださって、これなら採用してもらえるかなと思いました。

今は「リーダー」という役職をまかされています。
1日の仕事の流れとしては、まず会社に来て、今日はどんな感じで発注が入っているかと確認します。ホールに現場作業に行くこともあれば、スタジオで花祭壇を作ることもありますし、スタッフに「これを作ってください」と制作指示をすることもあります。翌朝の現場への積み込みも、課長が段取りを組まれますが、その祭壇が前日にできているかを見て指示を出したりします。現場監督まではいかないですけど、そんな感じですね。
時間のある時には祭壇制作をするスタッフへの「生花講習」もやっています。こちらで決めたお題を2ヶ月前ぐらいにスタッフに伝えて、作ってきてもらった花を見て指導するんですが、達成感は数値化しないと相手に伝わりにくいかなと思って、今は点数方式を取り入れています。合格ラインを決めておいて、下回っていたらどこを直すといいかアドバイスして、同じお題をもう1回やってもらいます。ぼんやり説明するより、項目を表にして点数化した方が、ここが足りなかったからこれだけ上げれば合格ですよ、という指導ができて、見える化できているかなと試しているところです。
スタッフは今、総勢14人です。未経験で入ってくる方が多いので、最初は先輩が同行して「こういったところに気をつけてください」と教えながら、少しずつ花の仕事を覚えていってもらう感じです。
仕事の中でちょっと頭を使うのは、供花や祭壇の注文が一気に来た時に、花が足りるかなというところです。花の仕入れ日が決まっているので、その日を外れている場合は、別のお店に頼んでお花を持ってきてもらったりします。
在庫を考えずに、祭壇に必要な色じゃない花を使って制作してしまうと、その色で指定がある祭壇の注文が入った時に花が足りなくなってしまうので、そういう時は先に制作指示を出します。たとえば、紫の花を入れてくださいという注文指定があるのに、色指定のないおまかせの祭壇に紫を使わないでほしいとか。気苦労というほどではないですけど、花の在庫を平均的に使えるように考えて制作するのは悩ましいところでもあり、面白いところでもあります。
綺麗な花で作った方が安全ですし、お客様に綺麗なものを提供できるという気持ちはみんな持っています。それはすごく大切なことだと思うんですが、どのお花を先に使うかを考えて材料のロスは減らさないといけません。料理と一緒で、材料がいつも揃っているわけではないので、冷蔵庫の中の材料でうまく料理をしていくという感じですかね。

葬儀の受注担当者からの発注書を見て制作を始めますが、金額が高かったりオリジナルの祭壇を作ってほしいという時は、それだけではどういうものを作っていいかわからないので、電話して確認して進めます。
たとえば猫をモチーフにしたり、鯛が泳いでいるような祭壇を作ったりしてほしいといった、オリジナリティのある注文が来た時は、「わっ」と驚きや面白さを感じる反面、作ったことがないデザインなので失敗する可能性をはらんでいるリクエストだから、ちょっと怖いなという気持ちも正直あります。
お客さんが喜んでくれるのがこの仕事での成功なんですけど、さまざまなリクエストにこたえることで花駒のお花への信頼を得られてきたと思っています。葬祭ディレクターの方に、難しい仕事や高額な注文を取ってきてもらって、それがうまくできた時に「お客さん、すごい喜んでくれたわ」と報告を受けると、やってよかったなという気持ちになります。信頼してもらえるのが一番嬉しいですね。
例えば鯛をモチーフにした祭壇を作った時は、「鯛、できますか?」という電話がかかってきて、「鯛の祭壇、作れると思います」と答えたものの、電話だけでは怖いので、インターネットで鯛の画像を2、3個出して、どの鯛がいいのかを尋ねてから、描いたデッサンの画像をLINEで送ってお客様にまず見てもらいました。
完成した祭壇をお客様にサプライズでお見せして喜んでもらうのもいいですが、あまりにもイメージが違っているといけないので、こういう方向で作るという方向性だけでも了承を得ておけば、そこから膨らませた分だけサプライズで喜んでもらえると思っています。
要望を聞いて手でデッサンを描いてイメージを伝えられるのは、今は私だけかもしれません。別に自分だけしかできない仕事だとは思っていないですけど、今のところ私がやっています。特注の祭壇で自社のホール以外に設営する場合は、担当から会場の間取りや寸法を伝えてもらって、そこからデッサンを起こして対応することもあります。
参列された方やご家族にお花を見てどう感じてほしいかと聞かれると、もちろん気持ちはあります。でも私自身、知り合いの葬儀が終わってからハッとしたことがあるのですが、後から思い返しても祭壇のことは何も覚えていなくて、遺影写真や葬家様の顔しか思い浮かばなかったんです。
祖父の葬儀の時も、この仕事をしているからというのもありますが、お花については賑やかにやってくれているなというぐらいの印象しか残っていません。こう言うのはよくないかもしれないですけど、葬儀の時にお花を見ている人って実は少ないのではと思うこともあります。それでも「お花がとてもよかった」と言ってくださるお客様もいるので、そこはありがたいところですね。
山が好きだったとか、思い入れのあるモチーフで希望があれば、それを祭壇に映せるように一生懸命作ります。しかし、もちろん皆さんがそこまで祭壇にお金をかけられるわけではなくて、決まったプランの中から選ぶしかない方もいます。それでも、品質の高いものをお客様に届けたいという気持ちは変わりません。悲しみの中でも、ちょっとでも気持ちが安らいでもらえたら、それが一番嬉しいです。

周りとのつながりが薄れていく時代の中で、葬儀にかける金額も少なくなっていく流れがあると思います。
だからこそ、クオリティの高いお花をお客様に届けるのを大事にしたい。悲しみの中でも、ちょっとでも気持ちが安らいだとお客様に思ってもらえたらうれしいです。
決められたプランの中でも、「こういうお花を、ちょっとプラスでつけませんか」と提案できるようなものがあれば、お客様もそこまで負担なく利用できるかもしれない。そういう会社のアイテムを増やしていけたらと思っています。
20歳の頃、たまたま始めた花の仕事。一度は別の仕事を経験しながらも、また戻ってきて、気がつけば30年以上、葬儀の花をつくり続けています。これからも、ちょっと怖いと思うような注文が来ることはあると思います。でも、なんでもチャレンジしないと。それが経験になっていかないんで。働ける限りは、この仕事を続けていきたいですね。